プロローグ

喉が焼けるように痛い。足も重くなり、左肩の出血のせいか、目も霞む。それでも走らなくてはならなった。耳から消えないあの言葉がそうさせる。

逃げなさい!
貴女は逃げて彼らを探すのです!
彼らなら必ず助けてくれる。
私は大丈夫…そう簡単にやられたりしないわ。

天宮(あまみや)の血と誇りにかけて…

だから、走り続けるのだ。
しなければならない事はわかっている。この追手からなんとしても逃れ、協力者を探さなければ。
脳裏から消えない顔がある。あの極限状態で、自分の身のほうが危ないというのに私を逃がした時の、あの微笑(ほほえ)み…。
必ず…必ず助け出す!だから…
「……死なないで。姉さん!」
あぁ、目の前が暗くなってきた。
混沌とした街の薄暗い路地に迷い込んであてどなくさ迷う。路地に差し込む派手な色をしたネオンの光すらも消えていく。
ここで倒れたらだめだ。まだ、完全に奴らを撒(ま)けていないのだから。せめて、誰か…。
ほとんど見えていない目に人影が写った。
路地を出るほんの少し手前だ。
かすれゆく意識の中で、その人間に本能的にすがりついた。
左肩を抑えて、血に濡れた右手でその人間の服に手を伸ばした。すがるような思いで、擦り切れた喉から声を発した。ただ一言…。

「助けて…!」
そこで彼女の意識はなくなった。

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